本当は米国言いなり。石原慎太郎「軍事国家になるべきだ」発言。

 4月5日付け朝日新聞。『橋下君を首相にしたい 軍事国家になるべきだ石原慎太郎氏インタビューの記事。

 石原慎太郎が述べたことを私なりに要約すると以下の通り。
 @夏の参院選では憲法改正を争点にしなければいけない。
 A日本は世界で孤立し、相手にされなくなっている
 B国際的な地位を確保するためにも憲法を改正しなければならない。
 C日本は周辺諸国に領土を奪われ、核兵器で恫喝されている。こんな国は日本だけだが、国民の自覚が無い。
 D日本は強力な軍事国家技術国家になるべきである。
 E核武装を議論することもこれからの選択肢。
 F今のような高福祉低負担は成り立たない。この国の基本を変えていかないといけない。

 昨年、石原慎太郎の東京都による尖閣購入問題をきっかけに馬鹿な野田首相は魚釣島、北小島、南小島の3島を地権者から購入し、国有化した。この国有化をきっかけに日中関係は非常に悪化した。また、日本国民のナショナリズムも高揚してきた。今回の石原慎太郎のインタビューのタイミングも非常に効果的だと思う。
 ところで尖閣諸島は何島あるか皆さんはご存じだろうか。魚釣島(面積3.82km2、最高標高363m)、久場島(0.91km2、117m)、大正島(0.06km2、75m)、北小島(0.31km2、118m)南小島(0.40km2、149m)、沖の北岩(0.05km2、28m)、沖の南岩(0.01km2、13m)、飛瀬(0.01km2、2m)と“島”が付くのが5島、“岩”の付くものが3つ、“瀬”が一つである。今回購入したのは3島だけで、同じ“島”の名が付く久場島と大正島は購入の対象になっていない。何故か。特に久場島は魚釣島に次いで大きい島にもかかわらず購入されていないのである。

 では久場島と大正島は現在、どのような扱いになっているのか。1972年5月15日に本土復帰と同時に日米合同委員会において、日米両政府が、久場島及び大正島を射爆撃場として米軍に提供することに合意し、1978年まで在日米軍が射爆撃場として使用していた。現在、米軍は射爆場として使用していないが、まだ提供状態が続いている。要するに尖閣諸島の久場島と大正島は日米両政府の合意で米軍の管理下にあるのである。

 さて以上のことを頭に置いて尖閣諸島の領有権問題について米国のコメントを見るとおかしなことに気が付く。「米国の尖閣問題に対する見解は中立」なのである。久場島と大正島を日本から借りておきながら中立というのは筋が通らない。これは小学生でも分かることである。米国は久場島と大正島を含む尖閣諸島が日本の領土であると実行面で認めながら中立と発言するその意図はどこにあるのかマスコミがこの問題に全く触れないのはマスコミの怠慢であり、マスコミ関係者は馬鹿ばかりだと思う。記者クラブからの情報しか収集する気の無い、要するにオウム記者しか日本にはいないのである。

 尖閣や竹島の領土問題についての本は多いが、この米国の態度について解答を与えてくれたのが豊下楢彦著『「尖閣問題」とは何か』(岩波現代文庫)である。私なりの解釈であるが、要するに第二次世界大戦後、米国は一貫して日本を利用するために日本に領土問題が生じるような種を残しておいたということである。日本が領土問題でもめ事を起こせば、米軍が日本に駐留する意義が認められる、ということである。

 さて話を元に戻そう。なぜ石原慎太郎は憲法改正を言い、軍事国家化を言うのか。石原慎太郎のことだから米国追随の為とは少しも考えていないだろう。しかし、米国は経済も疲弊し、軍事力も落ちている。同盟国による負担軽減も必要である。石原慎太郎が意図しようともせずとも石原慎太郎の主張である集団的自衛権の行使、憲法改正、軍事国家化は米国の対日要求事項そのものなのである。

 北朝鮮が米国に対して核の先制攻撃をすると騒いでいるがこれも納得がいく。そもそも米国は核未保有国に対する核先制使用権を有するとして北朝鮮を恫喝し続けてきた。米国がこういう態度を改めないのなら核を持ってやろうというのが北朝鮮の言い分である。今回の戦争危機についてもオバマが米韓軍事演習の内容を積極的に公表することで北朝鮮を牽制しようとしたが、想定以上に緊張が高まったために緊張を弱める方向に軌道修正したのである(4月5日夕刊)。要するにB52爆撃機やステルス性のあるB2爆撃機を米本土から飛ばして“先にやるぞ”と脅したのは米韓の方なのである。北朝鮮もならず者ならそれに劣らず米国もならず者である。日本が世界から相手にされなくなっている理由は、平和憲法があるからではなく、このならず者国家、米国に対して常に媚びへつらうことしかしないからである。勘違いも甚だしい。

 石原慎太郎が言っていることで正しいのはFだけである。この年になって分かったのは、自分自身も日本という国家も時代の変化を理解していないということである。美濃部都政の時代、福祉が叫ばれた。それから福祉、福祉と叫ばれ続けてきた。そしてどうなったか。財政破綻寸前の現在があるのである。一旦、福祉という方向に進み始めると修正できない日本。一方、イギリスはどうなったか。“墓場からゆりかごまで”と言われていたが、サッチャーの時にとんでもないことをやったらしい。老人が人工透析を受けたいなら自己負担でやってください!というような。人工透析は年間400〜500万円掛かったと思うが、要するに金の無い人は死んでください、ということである。

 最後に尖閣問題について一言。中国は面子を大切にする国であり、経済大国になったら米国以上の覇権国家になるつもりでいる。野田前首相は尖閣国有化のタイミングで中国の面子を潰した。尖閣問題は仮に棚上げが続いていたとしても、中国の経済がさらに発展した時点、即ち、中国の軍事力が米国に近付いた時点でいつかは問題になる課題であった。永久に現在の状態が続くことは両国にとって望ましいことではない。国際司法裁判所に判断を預けるのが最善ではないかと思う。

 最後に2012年9月19日付け朝日新聞の耕論“愛国”から新右翼団体「一水会」顧問 鈴木邦男氏発言の抜粋を載せる。
 『日本でも愛国を訴える政治家が多くいます。尖閣諸島や竹島の問題では、戦争も辞さない勢いで国民を扇動しています。愛国を訴えて、立派な政治家と思われたいのでしょう。あまりに不純、卑劣な態度です。大局的に国益を考え、中国や韓国をやっつけろと騒ぐ世論を抑えるのが政治家の役割です。国民と一緒になって騒いでどうするんですか。・・・・・国民生活を豊かにできない自らの無能を隠すために愛国を利用する卑怯者です。』

(2013年4月6日 記)

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